通常何かしら違法行為があった場合、その責任は会社に対して追求がなされることが多いですが、ケースによっては会社とあわせて取締役個人に対しても責任追及がなされる場合もあります。
- 取締役の会社に対する任務懈怠(さぼり)
- 任務懈怠について取締役に悪意または重過失があること
- 第三者の損害の発生
- 任務懈怠と損害との間に相当因果関係があること
とされています。
1の任務懈怠については、いわゆる善管注意義務を尽くさなかったことを指します。
善管注意義務は、取締役が会社のために「善い管理者として注意するべき義務」であり、この中には労働契約法に定められている「安全配慮義務」も含まれています。
安全配慮義務が含まれているため、取締役が現実に労働者が過重労働等、健康を害する危険のある就労状況を認識していたか、又は容易にに認識できたにも関わらず、これを放置した場合には上記義務に違反したものとして、悪意・重過失のある任務懈怠が認められ、損害賠償責任を負う可能性があります。
しかし、小規模な会社であれば取締役が業務の指示を直接行うことも珍しくないため、労働者の就労状況を認識するのは容易でしょうが、ある程度大きくなった会社では、取締役が各労働者の就労状況を認識するのは難しいというイメージがあります。
このような取締役が個々の労働者の長時間労働を認識できないような場合であっても、安全配慮義務を履行する社内体制を構築・運用する義務については、なお問題となり得ます。
上記社内体制とは、例えば実態調査・改善計画の策定、従業員へのアンケート、労働時間管理委員会及び労働時間管理部会における具体的な改善策の検討を継続して行うこと等、会社として労働者の就労状況について知ることができる何かしらの体制を言います。
ちなみに使用者による労働時間の状況把握は労働安全衛生法上の義務となっておりますが、弊社の打刻システムをご利用の顧問先様はこれを満たしています。(もちろん打刻させるだけでなく、使用者による確認は必要です。)
上記「不適切な労務管理」には労働時間の把握だけでなく、未払賃金・ハラスメント・違法解雇・不当労働行為等が含まれます。
労働問題が多くなり、会社も弊社も対応に追われる日々ですが、万が一の自体に備えて役員等賠償責任保険(D&O保険)をかけておくことができます。
注意点として、D&O保険は、会社による保険負担により、取締役が損害の填補を受けることになるため、利益相反性を否定できず、内容次第では取締役の職務執行の適正に影響を与える恐れもあります。
そのため保険に加入するには株主総会又は取締役会の決議により契約内容を決定しなければなりません。
労務管理については、弊社が最大限サポートして労働問題が起こらないように努めていますが、時代の流れや産業構造の変化、働き方の多様化等から、今まででは考えられないような視点観点からの労働問題が増えてきていますので、十分注意してください。